矯正装置をはずした後
矯正装置をはずした後、どうすればよいか。
矯正治療で、動的治療終了したら保定にはいります。
保定とは、動的治療で歯を動かした後にその状態を保つために歯を固定しておくことです。
では、なぜ保定が必要なのでしょうか。
矯正治療で歯の移動は、歯根の周りの骨の吸収と添加が起きることによって移動するため、骨や周囲の軟組織が安定するまで、時間がかかります。
矯正治療で動かした歯列は、元の歯列から新しい環境下にあるため、歯や周囲の筋肉が順応するまで変化しやすい。
上記のことから、矯正治療で保定は、必須です。
保定の方法
保定法(リテーナー)は、自然保定と器械保定の2種に分けられています。
自然保定とは、口腔周囲の筋肉、歯の接触、歯周組織等の支持によって達成される保定です。
器械保定は、矯正治療で動かした歯を器械を用いて保持する保定です。ほとんどの場合この保定をします。
器械保定装置の種類と利点・欠点
器械保定装置は、可撤式装置と固定式装置があります。
可撤式保定装置は、自分で取り外しができる装置です。
利点は、取り外して食事、歯磨きが出来るので生活に制限を受けることがない。
欠点は、装置を入れていないと歯が動いて入らなくなる。装置を入れているとき違和感がある。装置の手入れの必要があります。
固定式保定装置は、歯に接着等で固定する装置です。
利点は、取り外しの必要がない。装置によっては、見た目が目立たない。
欠点は、装置が口の中に固定されているので、違和感がある。歯みがきが難しくなる。歯に接着しているところが取れて歯が動くことがある。
可撤式保定装置
ホーレータイプ、ベッグタイプリテイナー
唇側線と舌側のレジン床からなる装置です。
利点:比較的丈夫で壊れにくい。(10年以上使用している方もいます。)
欠点:違和感がある。唇側線のワイヤー(表側の針金)が審美的に劣る。
トゥースポジショナー
軟性のシリコンゴムで上下一体の歯列全体を覆うリテイナーです。
利点;垂直方向の保定に有効、ポジショナーで歯の移動も可能。
欠点:違和感が大きい。製作に費用費が高い。
マウスピースタイプリテイナー(インビジブルリテイナー)
上下別々に歯列全体をプラスチックシートで覆うタイプのリテイナーです。
利点:目立たない。違和感が少ない。
欠点:破損しやすい。(歯ぎしり等で、歯列の噛む面から破損しやすい。)
固定式保定装置
舌側接着リテイナー
歯の裏側にワイヤーを接着剤で接着して固定するリテイナーです。
利点:外から見えないので、審美性が良い。
欠点:歯に接着で固定されているので、違和感がある。接着が剥がれることがあり、そのままにしておくと剥がれている歯が動くことがある。歯みがきが難しくなる。
保定装置の装着時間と期間
保定装置の装着時間は、不正咬合の症状によりますが矯正治療の動的治療終了後1年は、食事、歯みがき時以外は、装着してください。
1年後は、夜間のみ装置。
期間は、最低でも動的治療期間と同じ期間装着してください。
装置の装着時間と期間は、平均的な目安です。個々の症状によって変わりますので、ご注意ください。
※人間は、あごの骨格と筋肉の構造上、物を食べて咀嚼することで、歯には前方への力がかかりますので、リテーナーは、長く使用することをお勧めします。
マルチブラケット装置のセルフライゲーションブラケットとは
従来のブラケット装置にワイヤーをリガチャ―ワイヤーもしくはエラストマーで結紮します。結紮することでワイヤーはブラケット装置に押し付けられるため、歯が移動するのに摩耗力が大きくなり移動させるのに大きい力をひつようとします。セルフライゲーションブラケット装置は、ブラケット装置にワイヤーを保持する機構が付いており従来のブラケット装置のようにワイヤーを縛り付けないので歯の移動における摩耗抵抗が小さいので弱い力で効率よく移動させることができます。
従来はブラケットとワイヤーをエラスティックで強く締め付けていましたので、大きな摩擦力が生じていました。
セルフライゲーションブラケット(写真デーモンクリア)ではエラスティックが不必要となり、ブラケットに付属するシャッターを閉じるだけです。ワイヤーをまったく締め付けないようになったため、摩擦抵抗が小さくなります。
当院のセルフライゲーションブラケット装置は、世界で700万症例以上使われているデーモンシステムを採用しています。デーモンシステムは、アメリカの歯科矯正医であるDr. Dwight H. Damonが考案し、1996年にOrmco社から販売され、順次変更改良が加えられ最新の矯正治療システムです。
このシステムは、セルフライゲーションブラケット(デーモンブラケット)と従来のステンレスワイヤーでなく形状記憶合金ワイヤーから成り立っています。
デーモンシステムの利点
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)の利点は次の通りです。
1.弱い力で歯が動く
ワイヤーがブラケット装置にエラストマーで結紮されていないので、歯の移動における摩耗抵抗が小さいので、弱い力で歯の移動が可能です。
2.効率的に歯を動かせる
デーモンシステムブラケット装置と形状記憶合金ワイヤーとの組み合わせにより、弱くて持続的な矯正力が働くと歯が最も速く効率的に動くことが生物学的に分かっています。
3.非抜歯治療の可能性が高まる
デーモンシステムは、舌や口腔周囲の筋肉からの力を受けて、歯列は側方へ自然と拡大します。今まで拡大が難しい場合でも拡大することがありますので、非抜歯治療の可能性が高まります。
4.顎間ゴムが効きやすい
矯正治療中は、顎間ゴムと呼ばれる小さな取り外し可能な輪ゴムを、上下の歯に掛けて頂く場合があります。このゴムにより、噛み合わせをしっかりした状態にしたり、受け口や出っ歯を改善したりします。従来型のブラケット装置に比べてセルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)では、個々の歯が自由に動けるような状態でワイヤーにつながれているため、弱い顎間ゴムでもとても良く効きます。
5.清掃しやすい、変色がない。
従来のブラケット装置はワイヤーをエラスティック等で留めるため周囲が不潔になりやすく、清掃性が悪かったのですが、セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)では、が不要になったので、とても清掃しやすくなっています。また、ワイヤーを留めるエラストマーの変色を心配することもなくなります。
ワイヤーを留めるエラスティックは変色します。
6.1回の治療時間が短い
ブラケットにワイヤーをとめるのに使用していたエラスティックが不要になりましたので、1回あたりの治療時間も短くなります。長時間口を開けっ放しにするのは辛いものですから、治療時時が短くなったことにより気楽に通院して頂けます。お子様の矯正治療でメリットを感じます。
7.来院間隔の間隔が長くなる
デーモンブラケットとハイテクワイヤーを組み合わせて使用すると、長期間にわたって持続的な矯正力と効果を発揮しますので次回の来院まで、矯正力が有効に働きますので、来院頻度が2~3か月の来院で済むことがあります。
8.患者さんごとの生理的にあった治療である
自然な歯列の側方拡大効果など、患者さん各人の持てる力を引き出した結果です。また、弱い矯正力のおかげで、食事中の歯が噛み合わさった時でも、歯と歯を支えている歯槽骨・歯周組織との間で、本来持っているダイナミックな反応が起こりますので、歯の生理的な状態が維持されます。セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)では強引に歯を並べるのではなく、無理をせず自然な変化として歯をキレイに並べてゆきます。
9.歯への負担が少ない
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)では、従来よりも弱い矯正力によって歯に与えるダメージを最小限にできるため、咀嚼筋や顎関節にかかる負荷も軽減されます。歯根吸収も少ない。
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)の欠点
セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)の欠点は次の通りです。
1. 従来型ブラケット装置に比べて大きさが大きい。
ブラケット装置にワイヤーを結紮する機構が付いているため、装置が従来型ブラケット装置にくらべ大きくなります。
2.ブラケット装置の価格が高い
ブラケット装置に複雑な機構が付いているので、価格が高くなります。
まとめ
セルフライゲーション型マルチブラケット装置は、従来型ブラケット装置を用いたマルチブラケット法にくらべ利点が多いく、おすすめです。しかし、当院では、治療費が従来型ブラケット装置のマルチブラケット法より高くなります。
また、セルフライゲーション型マルチブラケット装置は、世界中では数十種類も販売されているらしいのですが、その中でも歴史が古くかつ毎年のように進化、改良してバージョンアップしているデイモンシステムをお勧めいたします。
デイモンシステムは、単にマルチブラケット装置にセルフライゲーション型ブラケットを使用しているのでなく、ハイテクワイヤーとの組み合わせにより、個人個人の口腔内(あごの大きさや口の周囲の筋肉など)に合った歯の移動を可能にしていますので、生体に優しいマルチブラケット装置の矯正治療といえます。だから、世界で700万症例以上も売れたと思います。それは単にブラケットの完成度が高いだけでなく、セルフライゲーション型マルチブラケット装置(デーモンシステム)で治した症例のクオリティがあまりにも高かったのだと思います。